2025 Seoul Mobility Show を歩きながら考えたこと

あの頃の熱気は、もう戻らないのかもしれない

韓国・京畿道高陽市のKINTEXで開催された「2025 Seoul Mobility Show」。
この展示会に足を運ぶのは、実に久しぶりのことだった。かつて「ソウルモーターショー」と呼ばれていたこのイベントは、1995年から始まり、時代とともにその名を変え、いまは「モビリティショー」として未来の移動技術を語る場へと姿を変えている。私にとってのモーターショーは、ある意味ひとつの「時代の象徴」でもあった。煌々と輝く照明、音楽と映像に包まれたステージ、胸をときめかせながら新型車に見入る人々。あの頃、クルマは夢であり、ステータスであり、男たち(そして多くの若者たち)の憧れそのものだった。

だが、2025年の会場を歩きながら、私はふと思った。「あの熱気は、もう戻らないのかもしれないな」と。

 

レクサス、トヨタ、ホンダなどもいない

今回、展示されていたブランドは、現代(ヒョンデ)、起亜、Genesis(ジェネシス)、そしてBMW、メルセデス、アウディ、ポルシェ、ロータス、BYDなど。けれども、そこにあって当然だと思っていた名前が、ことごとく見当たらなかった。

トヨタもホンダも、今回出展を見送った。そしてテスラもまた、その姿を見せることはなかった。

華やかだったあの頃を知る者としては、これはなかなか衝撃的な光景だった。いや、正直に言えば、ちょっと寂しかった。

 

いま韓国の若者は、クルマに夢を見ない

調べてみると、背景には韓国社会そのものの変化があるようだった。

  • 20代以下の新車購入割合は過去最低の5.3%(2024年)
  • 若者にとってクルマは“必需品”ではなくなった
  • むしろ、高級車やスーパーカーへの関心は高まり続けている
  • 一方で、地下鉄と配車アプリがあれば、十分に事足りる暮らし
  • そして、自動運転などの「技術」への期待が膨らむ時代

──そうか。
「所有」より「体験」へ、「移動手段」より「ライフスタイル」へ。
クルマという存在そのものが、役割を変えようとしているのかもしれない。


Genesis
 

それでも、モビリティは進化していく

今回のソウルモビリティショーは、かつてのような派手さや熱狂はない。でも、それが時代の終わりを意味するわけではないと私は思う。

むしろ、静かに、確実に、次のステージへと歩みを進めている。個人の生き方が多様化し、社会の価値観が変わっていく中で、モビリティの世界もまた、新しい価値を探しながら進化していくのだろう。

 

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